クリニックブログ


3月号 フリーペーパー Vol.120 フレイル

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『年を重ねるにつれて、身体的・精神的・社会的な機能が衰えていく状態』のこと。放置すれば要介護状態に進行する可能性がありますが、早期に対応することで、進行を抑えたり、状態の改善が期待できる段階です。

これまで身体の衰えと認知機能の低下は別々に考えられてきましたが、近年、両者が重なると要介護状態への移行が大きく高まることが分かってきました。身体機能と認知機能は相互に影響し合うため、一体として捉えることが重要です。

認知的フレイルは、適度な運動や社会参加、人との交流、会話、読書など日々の生活で頭を使うことにより、改善や進行抑制が期待できます。あらためて「体と脳の健康」に早期に気付き早期に支える重要性が高まっています。

フレイル予防のカギは、「栄養」「運動」「社会参加」。毎月発信している管理栄養士ブログでは、体と心を整える食と暮らしのヒントをお届けしています。

など、すぐに実践できる内容をわかりやすくお届けしています。
3月は握力と健康寿命がテーマ。今日からできる簡単ケアや、握力と全身の健康との関係など、毎日の生活習慣の積み重ねが握力に表れることを開設しています。

 

参考:
・厚生労働省「フレイル対策の手引き(令和6年度版)」
・国立長寿医療研究センター「知って防ごう!フレイル」特設ページ
・日本老年医学会:高齢者の包括的フレイル評価(CGA)指針

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2026/03/04

握力と健康寿命

あさのクリニック管理栄養士です。

毎年3月になると「奈良のお水取りが終わるまでは寒い」という母の口癖がでます。関西特有の言い回しのようです。
『お水取り』とは、奈良東大寺で行われる「修二会」のことで、752年から一度も途絶えることなく続く伝統行事です。二月堂の本尊である十一面観音菩薩に対し、人々の過ちを懺悔し、国家の安泰や五穀豊穣を祈る法要です。
3月1日から14日まで開催され、12日の深夜に『お水取り』という儀式が行われます。

話は変わりますが、先日、学生以来久しぶりに握力測定をしました。
それをきっかけに握力について調べてみるとおもしろいことがわかりました。

握力は、健康寿命のカギとなるのはご存じですか?

握力測定

握力は単なる手の力ではない!?

握力と聞くと、「力仕事をする人や筋トレをしている人の話でしょ?」「年をとったら弱くなるのは当たり前」と思われるかもしれません。

でも実は、握力はこれから先、どれくらい元気にくらせるかを教えてくれるとても大切な目安だということが世界中の研究でわかってきています。

握力が弱いと何が起きやすい?

近年の研究では、握力が弱い人ほど、

  • 病気になりやすい
  • 入院や介護が必要になる可能性が高い 
  • 心臓や血管の病気、呼吸器の病気のリスクが高い
  • 全体的に「体の回復力」が落ちやすい

といった傾向があることが報告されています。
つまり、握力は「手の力」だけでなく、身体全体の元気度を反映していると考えられているのです。

握力と年齢は関係ある?

確かに、年を重ねると筋力は少しずつ下がっていきます。しかし、同じ年齢でも握力に大きな差があることがわかっています。
その差を生むのは…

  • 日常的に体を動かしているか
  • 食事がきちんととれているか
  • 生活リズムが整っているか

といった、日々の暮らし方です。
つまり、握力は年齢そのものよりも、これまでの生活の積み重ねが表れやすい部分なのです。

自宅で簡単にできる握力ケア

握力は、特別な器具や激しい運動をしなくても毎日のちょっとした動きで十分に保つことができます。
大切なのは、以下の3つです。

力いっぱいやらない
痛みが出ない
気づいたときに少し動かす

タオル握り(1日1~2分)

用意するもの:フェイスタオル1枚

  1. タオルを軽く丸め、片手でぎゅっと握る。
  2. 3秒数えてゆるめる。
  3. これを5〜10回繰り返し、反対の手も同じように行う。
タオル握り

 *全力の6〜7割くらいの力で十分です。
  息は止めずに自然に呼吸をしながら行いましょう。

グーパー体操

  1. 手を前に伸ばして、指を思いっきり開く。
  2. ゆっくりグーにする。
  3. これを10回程度繰り返す。
    (親指が中、外交互になるようにグーにするのがおすすめ)

 *開く動きを意識すると血のめぐりもよくなります。
  テレビをみながらやってみましょう。

グーパー体操

年代別平均握力

以下は年代別の握力の平均値です。握力を測ることがあれば参考にしてください。

年代別平均握力
握力測定

さいごに

私は左右の握力が、31㎏くらいと嬉しい驚きでした。

握力体操をしているわけではないのですが、考えてみると布巾やタオルをよく絞っている気がします。
トイレが和式から洋式になり下半身や骨盤底筋の衰えに影響するように、雑巾がけだった掃除が掃除機やお掃除ワイパーなどを使うことにより、あまり手を使って絞るという行為をしなくなった結果、握力の衰えにつながっている可能性も否定できないと感じました。

握力(雑巾絞り)

手は『第2の脳』とも呼ばれています。
手指を使うことにより脳が活性化され、認知機能の向上、認知症予防にもなります。

暖かくなってから運動を始めようと思われている方!今日からお部屋の中で握力体操を始めてみませんか?

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2026/02/27

2月号 フリーペーパー Vol.119 認知症

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近年、あらためて注目されているのが、日常生活と認知症の関係です。特に重要とされているのは、適度な運動(散歩など)、バランスの良い食事、高血圧・糖尿病の管理、人とのつながりなど中年期以降の生活習慣が、その後の認知症リスクに大きく影響することがわかってきました。

認知症は「早めの気づき」が大切です。

  • もの忘れで生活に困り始めた
  • 同じことを何度も繰り返す
  • 時間や予防が分からなくなる
  • 不安や怒りっぽさが続いている
  • 家族が変化に気づいている

これらがあてはまっているからといって、必ずしも認知症とは限りませんが、早期発見・早期対応で進行を遅らせることができる場合もあります。「もしかして認知症では」と思われる症状に気付いたら、まずは日々の体調を診てもらっている「かかりつけ医」に、今の困りごとについて相談をしましょう。かかりつけが無い方は、地域の認知症相談窓口である地域包括支援センターでも相談が可能です。

バランスの良い食事を心がけ、高血圧や糖尿病などの生活習慣病をきちんと管理することは、認知症の予防にもつながる大切なポイントです。「毎日少し外に出る」「買い物のついでに歩く」といった小さな習慣が大切です。
無理な制限ではなく、「できることを、できる範囲で続ける」ことが大切です。

最近の研究では、人との会話や交流が、脳の働きを活発にすることがわかってきました。また、強い孤独感がある人は、認知症の発症リスクが高くなることもわかっています。ご家族との会話、友人とのおしゃべり、地域の集まりへの参加など、人と関わる時間そのものが、脳の健康を守る力になります。

出典:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」「フレイル予防に関する情報」「認知症施策(社会参加の推進)」を参考に作成

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2026/02/02

冬に起こる「味覚のバグ」

あさのクリニック管理栄養士です。

冬になるとやたらと甘いものが欲しい
濃い味じゃないと満足できない
外食がいつもよりおいしく感じる

など、味が違うと感じることはありませんか?

実はこれ、気のせいではなく「冬は味覚が変化しやすい」という科学的根拠があるんです。 今回は、そんな「冬の味覚のバグ」を解説していきます。

味を感じるとき、私たちは舌だけを使っているわけではありません。
舌の味蕾(みらい:味を感じる細胞)、料理の温度、香り、血流、自律神経、脳の状態、たくさんの要素が合わさって “味” が生まれています。
冬はこれらの条件が全て変化します。

味蕾の機能低下

冬の乾燥は口内の粘膜を弱らせます。味蕾は水分と血流がないと十分に働きません。冬は空気が乾燥している上に暖房などで室内はさらに乾燥し、味を感じにくくなります。冷え性、低血圧の人は特にこの影響を受けやすくなります。

この結果、味を濃くしないと「味がする」と認識できにくくなります。

温度による味覚の変化

冬は料理が冷めやすいですよね。この冷たさが味覚に影響を与えます。

甘味:冷たいほど感じにくい
塩味:冷たいほど弱くなる
苦味:冷たいほど強く感じる
旨味:温度変化の影響が少ない

つまり、冬は自然と甘味、塩味を「もっと欲しい」と感じやすくなります。

鼻が乾くと、味も薄くなる

味の約7割は「香り」で感じていると言われています。
冬は、鼻やのどが乾燥しやすい、湿度が低い、風邪を引いて鼻が詰まりやすいなど、香りをキャッチする力を弱めてしまいます。

香りが弱い → 味がぼやける、という流れで気づかないうちに調味料が増えてしまうことがあります。

日照時間の少なさと甘味欲の関係

冬になると日照時間が短くなり、脳内のセロトニンが減りやすくなります。
セロトニンが少なくなると、気分が落ちやすい、イライラしやすい、やる気が出にくい…などの状態になりやすく、脳は「早く気分をあげられるもの=甘味」を求めるようになります。

冬の「甘い物が止まらない…」は、心の弱さではなく脳の自然な反応なのです。

冬の味覚の整え方

温かい料理を中心にする

料理の温度をあげるだけで、味覚の感度がぐっと戻ります。

スープや鍋、蒸し野菜などの温かい料理をいただきましょう。
片栗粉でとろみをつけるのもおすすめです。

香りの力を借りる

香りが脳を刺激して「美味しい」と判断します。薄味でも香りで満足度をアップしてくれます。

昆布、鰹

グルタミン酸、イノシン酸
の旨味で相乗効果

干し椎茸

グアニル酸で植物性でも
深いコク

柑橘類

塩分がなくても
爽快感アップ

ハーブ

香りが脳の報酬系を
刺激します

乾燥対策

乾燥の定義は湿度が50%以下とされています。40%以下になるとウィルスも増殖しやすくなります。

加湿器をつけたり、濡れたタオルを部屋にかけるなどして湿度を保ちましょう。

また、温かい飲み物をこまめに飲むなどして、舌の乾燥対策も大切です。

軽い運動で血流をよくする

味蕾は、血液で栄養が運ばれます。

「血流が悪い = 味覚が鈍る」ということに。

食後の散歩や、デスクワークの合間の肩甲骨回し、TVを見ながら足首回しなど、すきま時間を見つけて体を動かしましょう。

日光を浴びて睡眠を整える

甘いものへの欲求は、ストレスと睡眠不足で強くなることが知られています。

日光を浴びる → セロトニン産生 → 夜メラトニンを産生 → 睡眠

この流れが安定すると甘いものへの衝動も落ち着いてきます。

メラトニンはセロトニンを原料とし、朝日を浴びてだいたい15時間後(就寝の1~2時間前)くらいからメラトニンの分泌が活発になり眠くなります。

さいごに

味覚が鈍る時期 = 逆にケアの効果を感じやすい時期です。

温かく、香りを楽しみ、潤し、動き、眠る。

どれも特別なことではなく、「冬の体を優しく扱う暮らし」です。

味覚が整うと、少しの甘味や塩味でも満足でき、食材そのものの味や香りを楽しむことができます。

冬は味覚を育て直すチャンスかもしれません。無理せず日々の習慣の中で整えていきましょう。

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2026/02/01

1月号 フリーペーパー Vol.118 今とこれからのこと

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今とこれからのこと 心づもりを話そう!

みなさんは、これからの人生をどのように過ごしたいか考えたことはありますか。
近年、「もしものとき」の医療やケアについて前もって話し合う「人生会議」への関心が高まり、家族や身近な人と話題にする機会が増えてきました。

テレビや新聞、医療機関での啓発をきっかけに、「一度は話しておきたいね」という声が増えてきています。さらに昨今では、単に”話して終わり”ではなく、「状況や気持ちが変わったら更新していく」ことが大切という考え方がより重視されるようになってきました。「今はこう思うけれど、将来は変わるかもしれない」その前提で、何度も話し直すことが大切と言われています。

どのような生き方を望むかは、一人ひとり異なるものです。そして、それはライフステージとともに変わっていくこともあります。

命の危険が迫った状態になると、約70%の方が「どんな治療を受けるか」「どんな生活をしたいか」という希望を伝えられなくなると言われています。

誰もが突然命に関わる大きな病気やケガをする可能性はあるので、話し合いをしておくことで、万が一、あなたが自分の気持ちを話せなくなったときに、あなたの心の声を伝える大切な手段となります。それは、信頼できる人が、あなたと話をした、あなたの大切にしたい生活や想い、治療の希望について考える際の大きな支えになるでしょう。

家族や信頼できる人と、お互いの人生で大切にしていることについて、会話する時間をつくってみませんか?気持ちは変わることもあるので、1度きりではなく、何回も会話する機会をもってみてはいかがでしょうか。

あさのクリニックでは、皆さんと心づもりを話すきっかけとして『今とこれからのこと』という記入ができるパンフレットを作成しました。診療の際に患者さんや家族と話をするためのものと、啓発配布用の2種類をつくり、順次活用を始めています。ご希望の方はお気軽にお声がけください。

厚生労働省『「人生会議」してみませんか』を参考に作成

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2026/01/07