権丈ゼミの皆さんから感想をいただきました!その⑤

こんにちは!院長の浅野です。
シリーズ 権丈ゼミスペシャル・・・私たちにとって本当に大きな学びとなりました。感謝です!!!

慶應義塾大学商学部 Eさん

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あさのクリニックの皆さま。短い時間ではありましたが、本当にお世話になりました。とにかく見るものすべてが新鮮で、どこか衝撃的で、自分の中で何か幅が広がっていった気がしました。

今まで「地域包括ケア」として医療の現場を地域・在宅の方向に向けた制度が動いていることは、学校で権丈先生から学び勉強してきました。私は正直、先生が言っているからという理由で、実情はたいして知りもせずに、それはやるべきことで正しいことだからどんどん進めていけばいい、などと思っていました。だから今回、介護サミットなどにも参加した上で初めて現場の側をきちんと見たことで、思っていたほど簡単なことではなく一筋縄ではいかないのだなあというのを肌で感じることになりました。制度設計側と現場との間にも多少の乖離があり、現場の中でも認識・意識の違いがあることを知って、それでも正しい方向に進めていくにはどうしたら良いのかということを考えていかなければならない難しさを改めて感じました。観光は全くできませんでしたが(笑)、本当に岡山まで行って良かったです。見学を快く受け入れてくださり、ありがとうございました。

見学を通して、感じたことはたくさんありました。その中でも自分の中で印象的だったことを文章にさせていただきたいと思います。

最初の退院のカンファレンスにおいては、「病院ではなく家で治療を施す」ということには現実的な難しさがあることを知りました。病院であれば容易にできることが在宅ではそうはいかない、家でできることには制限がある。だから退院後に問題が起きないように退院前にきちんと解消しておかなければならない。退院させさえすればあとは在宅に丸投げ、ではなく、病院と在宅医療との間で適切な役割分担が必要であるということがよく分かりました。

「病院での治療は在宅を見据えたものであるべき」。

在宅で制限がある部分を病院はきちんと補ってあげなければいけません。この点はどの地域においても変わらない部分であり、制度設計の段階でも、誤解のないように後押ししてあげる必要があるのではないかと思います。

次に訪れた訪問診療においては、まず私は、寝たきりでコミュニケーションもほぼ取れないような方をあれだけ間近で見ること自体が初めてで、衝撃を受けました。それと同時に、ここまで重度の方までも家でみるのかと、私たちは地域地域と簡単に言っているけれども将来的にはこうした状態を増やしていくのが現実かと、感じました。「ターミナルケア」では、ご家族のことが特に気にかかりました。完治を目指す治療ではなく緩和治療であるため、困難な状況の末、ご本人やご家族にとって更に辛い症状に苛まれた場合、それが自宅で、目の前で起きたら、介護者はどう思うのでしょうか。

慢性期の患者などに対して、人員不足や医療費削減などのためにも、在宅医療を進めている、この動き自体は間違いではないと思います。特に財源がなく超少子高齢化が進むこの国では仕方のないことだと思います。そして、本人や家族が自宅での療養や最期を望むのであれば問題はないことだと思います。

私がこの構想でイメージしていたのは、家族に囲まれて自宅で幸せに亡くなられるおばあちゃん、といった姿でした。しかし現実を見てみると、イメージ通りとはいきませんでした。広い家の中で、介護者は基本的にずっとベッドサイドにいるのでしょう。ほぼコミュニケーションをとることが出来ない寝たきりの患者さんをずっと看ながら一日中生活していることを想像したら、実際に介護者がどう思ってらっしゃるのかは分からないけれど、もし自分があの状況になったらどんな気持ちになるのだろう…。

外来の見学においては、まず単純に感じたのは、認知症関連で来院する患者さんの多さでした。

来院した方のうち、ご家族と一緒に来られていたアルツハイマー型認知症の方が、個人的には印象的でした。薬を飲んでいる意識がないなど、「忘れてしまっている」ことに対して一瞬見せたあの悲しそうな泣きそうな表情は、忘れられません。自分の家族や近しい人が同じような状態になった時、自分ならどう支えてあげることができるのだろうと、考えるきっかけになりました。

また、外来の患者さんの診察と診察の間に浅野先生にお話いただいたことは、かなり心に残りました。私は、「地域包括ケアといっても、その具体的なやり方は地域に任せる=ご当地」というのはあまりに放任だなあと思っていました。そのやり方が分からないせいで、なかなか実際には進んでいないのではないか、という印象を持っていました。しかし浅野先生の話を聞いて、そういうことではないのだということを強く感じました。上から降ってくる制度が何かしてくれるのを待つのではなく、自分たちがいかに制度を利用するかである。そうしなければ、実情やニーズに合ったものは作れない。目の前の患者さんとどう向き合っていくのか、は制度を待つのではなく、現場にいる人たちが自ら考えていく必要がある。権丈先生が言いたかったことは、丸投げしているのではなく、主体的にやってほしい、ということだったのかなと思いました。そのために今ある社会保障制度をきちんと学んでいく必要があるし、それを最大限活用していくべきです。退院のカンファレンスの後に教えていただいた、訪問看護における介護保険と医療保険の組み合わせの話も、それと似たようなことなのかなと思いました。

見学のあと、現在医学部に通っている小学校からの友人に会いに行きました。そこで、医学部での勉強の話などを聞かせてもらう機会がありました。医療保険をはじめとする社会保障制度や、地域包括ケアについてもきちんと学習していました。私としては、初めてゼミ生以外の同学年の友人と、ゼミで学んだ制度の話を対等にできて貴重な場でした(笑)その子は制度の話は覚える語句の正式名称が長くて嫌いだと言っていましたが、そうした話の中で感じたのは、そうした教育の場においてもっと現実を正しく伝えることが出来たらいいのに、ということでした。特に将来この地域包括ケアの一端を担っていくことになる医者の卵たちが、ただ制度を名前や机上の仕組みだけ覚えるのではなく、病院と在宅との関係性はどうあるべきだとか、現場での実情を知るようになれば、未来はもっと明るいのかなと思いました。

最後にはなりますが、こうした機会を与えていただいて、私は本当に恵まれているなと感じました。最前線で一生懸命に前に進めようとしているのを拝見して、すごく感化されたなと思う部分はやはり大きかったです。私事になりますが、来春より社会人となり、医療介護とは違う方向に進みますが、今後もこうした社会保障制度の中での医療の動きには注目していきたいですし、何らかの形でどこかで今回の経験が生きると良いなあと思っています。少なくとも、現場に、こうやって最前線で頑張っている方がいらっしゃって、地域包括ケアに対して机上の話ではなく進めている現状があるということが分かったこと、そしてそれを生で見ることができたということ、これが自分の中で大きな一歩になったと思っております。本当にお世話になりました。ありがとうございました!


2016/11/01 見学・研修

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