先日、当院に見学に来院された、倉敷中央病院 救急科 田村暢一郎先生より感想をいただきました。
今回、倉敷中央病院へタイの救急医2名が3週間の短期留学に来られました。タイは日本ほど高齢化社会ではなく、また医療システムも日本とは大きな違いがあり、慢性疾患や認知症をお持ちの高齢患者さんへの訪問診療はタイでは一般的ではないため、見学のお願いを総社市のあさのクリニック(浅野先生)にお願いいたしました。しかし、かく言う私も日頃は主に救命センターで働いている医師であり、慢性期とくに、自宅に帰られた後の患者さんがどういった暮らしをされていて、どういうことに困られていて、訪問診療が具体的に何の治療を行っているのかを知る機会は今までにほとんどありませんでした。
実際に午前(藤原先生)、午後(浅野先生)の訪問診療に同行させていただき、一番強く思ったことは、訪問診療でカバーしないといけないのは患者さんの身体的側面だけでなく、心理的側面や食事や入浴などの福祉サポート、経済的側面など多岐にわたるということでした。また患者さんだけでなく、ご家族さまの健康や介護による疲労もケアされていました。「病気を治すのではなく、人そのものを治す」ということはよく言われることですが、それを実践するためには、日頃から浅野先生、藤原先生が行われているような診療が必要なのだと実感しました。
しかし、同時にそういった患者さんだけでなく、ご家族までを含めたサポート体制を構築するには、医師だけでなく、看護師、薬剤師、ケアマネ、施設職員ほか、すべての職種とご家族が各自のアセスメントや方針をフランクに伝え合えるようなシステムの必要性を感じました。
日頃私は救命センターで働いていて、実際に診療している目の前の患者さんが救命した後、自宅退院できているのだろうか? 幸せに暮らしていけているのだろうか?と思うことが多々ありますが、実際に自宅退院後の患者さんやそのご家族の声を聞く機会はほとんどありません。しかし、そういった状況は非常に視野の狭い救急医を育成してしまう危険性があります。(かくいう自分もそういった側面があります。)救急医が実際に診療した患者さんが中長期的にどういった生活を送られているのか?を知る機会が増えればいいと思いますし、浅野先生のような地域でプライマリケアを担う先生と救命センターの救急医が患者ベースでもっとコミュニケーションをとれる機会を増やしていきたいです。
今回はタイの先生の見学が目的でしたが、私自身も多くのことを感じることができました。見学を引き受けてくださりありがとうございました。また若手救急医の見学や実習を引き受けてくだされば幸いです。
倉敷中央病院 救急科 医師
田村暢一郎
田村先生ありがとうございました。
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